消えなかった土星のリング

 今年は、あの美しく神秘的な土星のリングが見えなくなる年に当たっていた。これを「土星環消失」と呼んでいるが、土星の公転周期約30年の半分に当たるおよそ15年ごとに土星のリングが地球から見たときにほぼ水平になるために起こる現象だ。
 2025年は北から南へ移る年に当たっていて、そのとき環は土星を貫く1本の串のように見えるはずだが、限りなく薄い環は、まるでなかったかのようにほとんど見えなくなってしまう。
 土星環消失には、二つのパターンがある。一つは地球から土星の赤道面を見る、つまり土星リングを真横から見るために起こる。もう一つは太陽が土星の赤道面を照らす、つまり土星のリングを真横から照らすことにより起こる。今回の消失はパターン1が2回、パターン2が1回の3回お消失が起こる珍しい状況だった。
 1回目の3月24日にはパターン1の環の消失が起こった。ただし、土星は3月13日が合だったので、3月24日の環の消失は、残念ながら太陽に近すぎて見ることはできなかった。そして5月7日に2回目の環の消失が起こった。今度はパターン2の消失が起こった。この時は明け方の東の低空に土星が姿を現していたので、環のない土星をなんとか見ることができた。そして11月25日に3回目の消失が、地球が「ほぼ」土星をがほぼ真横から見るパターン1により起こった。「ほぼ」というのは、完全に真横にはならず、0.4°だけ地球が南にずれていたからだ。たった0.4°しかないなら、おそらく薄い環は見えなくなるだろうと予想したわけだ。この時は午後7時ごろ土星が南中するという好条件だったので、多くに人々が望遠鏡を土星に向けたことだろう。

 ところが、環は消えることなく、1本の細い線となって見えていた。結局この時、地球は0.4°しか南にずれいなかったが、太陽は、およそ3°南にずれていたため、環の南面をしっかり照らしている状態だったのだ。その結果たとえ0.4°でも角度が付いていれば、太陽に照らされた環が見えるというわけだ。

 環の見えない土星が見えなかったのは残念だが、まあ環があってなんぼの土星。串刺しの土星もおつなものだ。

2025年12月04日