★5月の星空
さわやかな日差しがサンサンと降り注ぎ、あまりの心地よさに眠気を誘う5月。宵空にはおおぐま座・かに座・しし座・うみへび座といった化け物星座たちが南中してのんびり昼寝をしているようだ。
北斗七星の柄の曲がりに沿って、うしかい座のアルクトウルス、おとめ座のスピカを貫いて、からす座に伸びる春の大曲線が南中して、春の星座のガイド役となってくれている。アルクトウルスは全天で4番に明るい恒星。「熊の番人」という意味だ。これは放牧している牛を大熊から守るという意味合いからついた名前である。日本では黄金色の輝きから「麦星」と呼ばれる。一方スピカは「麦の穂」という意味だ。これはおとめが持っている麦の穂のところで輝くことからついた名前である。それにしても日本では色を見て直感的にアルクトウルスを麦にたとえ、西洋では星座から論理的にスピカを麦にたとえる感性の違いがおもしろい。ところでスピカのことを日本では清純な青白い輝きから,「真珠星」と呼んでいるが、麦星と真珠星は春の金星銀星と見ることもできる。
5月6日未明には、ハレー彗星を母天体とするみずがめ座η流星群が極大となる。午前3時ごろから明け方にかけて、南東の空を中心に星空を見上げてみよう。

火星がかに座を駆け抜ける
5月5日火星がプレセペ星団にニアミス
4月から、宵の西天を賑わしている火星だが、今年1月に接近して以来じわじわ遠ざかり、5月に入ると視直径は46.4秒角まで落ち込んでしまった。おかげで明るさも1.0等と勢いが衰えてきた感がある。それでも赤い輝きは健在だ。

4月中旬にふたご座からかに座に入った火星は、宵空の中で散開星団プレセペ(M44)を目指すように順行してゆく。そして5月4日から6日にかけて、プレセペ星団のすぐ北をかすめるように通過してゆく。プレセペ星団の視直径は約1.6°なので、双眼鏡で見ると、まるでプレセペ星団に赤色巨星が現れたような錯覚に陥るかもしれない。
では、接近のようすをもう少し詳しく見てみよう。まず火星は、5月日にプレセペ星団を囲む4つの星が作る四角形の中に入る。そしてプレセペ星団目指すように東に移動し4日宵には、プレセペ星団の北西に接する。その後ゆっくりプレセペ星団の北を移動して、6日宵には星団の東側にすすむ。その後は、プレセペ星団からどんどん離れ、5月7日にはプレセペ星団を囲む四角形からも出てしまう。
今回のニアミスは、火星がプレセペ星団の中央を突っ切ってゆくというわけではなくやや北寄りを通過することになるのが少し残念だが、宵の西空の高い位置で観望することが火星がプレセペ星団に接近し離れてゆくようすを双眼鏡や望遠鏡の低倍率で毎晩観望すると、火星の動きが意外に早いことを実感することができるだろう。
